「全国中学生合同合宿引率報告」 2006.05.05


image 2006年3月27日、28日にかけて日本空手協会総本部にて全国中学生合同合宿が開催され、私は幸運にも府中支部の少年達の引率者としてその稽古を2日間にわたり見学することができました。総本部での見取り稽古をたくさん経験でき、この貴重な機会を作っていただいたことに感謝しています。

 先ず、合同稽古が始まる前の中原信之会長の挨拶の中で、「空手は日本古来の『武道』として引き継いでいかなくてはならない」と熱く語られていました。中原会長は空手の「礼」についても少年達に以下のようにわかり易いように説明され、黒帯を締めた数百人の中学生の子供達は姿勢を崩さず真剣に聴いていました。

 会長曰く、空手の『礼』という物を固く考える必要はありません。
・朝起きたらお父さんお母さんに 「おはようございます!」 
・朝ご飯を食べるときに 「いただきます!」
・学校に行くときに 「行って来ます!」
・誰かが親切にしてくれたら 「ありがとうございます!」
これらの言葉を自然に言える事がもっとも大事な『礼』なのだと言われました。

 そのお話をされた時、いつも稽古の際に、府中支部道場の先生方から「履物を揃えること」と言われている事を思い出しました。同じ意味のことを中原会長も言っておられたと思います。難しいことではありません。何気ない自然な振る舞いの中の「礼」なのです。我々空手を志す者はその「礼」が出来なければなりません。

 合宿初日の午前の稽古は杉浦初久ニ首席師範の直々の指導による稽古でした。他の引率の方々はビデオカメラでその稽古模様を撮影し始めました。私も身を乗り出して見取り稽古に集中しました。「一体どんな稽古をやるのだろう? きっと厳しい稽古に違いない」、と思いました。ところが、杉浦初久ニ首席師範は子供達を集めて、ひとつひとつの基本の立ち方について丁寧にわかりやすく指導されました。自然体から前屈立ち、後屈立ち、騎馬立ちの作り方を子供達が理解するまで何度も繰り返えされていました。驚いたことに、その間は突きも蹴りも一切指導されませんでした。なんと「立ち方」のみを一時間もかけて指導されたのです。これはいかに基本中の基本の「立ち方」が大事だということではないかと改めて思った次第です。。杉浦首席師範は何よりもまず、「しっかりとした立ち方を整えなければ空手
の技にならない。空手は基本を忘れてはいけない。」という事を教えていただきました。

 昼休みを終え、午後より型稽古が本格的に始まりました。稽古内容は「平安五段」「鉄騎初段」「慈恩」の3つの型です。総本部の指導員の先生方がまず初めに指導されたことは「腰の回転」でした。「半身からの逆突きは膝を崩してはならない。後ろ足にねじれを作る。ひとつひとつ逆突きのエッセンス。」などをわかりやすく指導されました。稽古が始まって程なくして、総本部の指導員の先生方の熱心さが伝わってきました。ニ百人ほどの中学1年生達に対し、総本部の指導員の先生方は3人から4人です。少年達のひとりひとりを見て、丁寧に指導していきます。しかしその指導内容は厳しく、休みなく繰り広げられる稽古、何度も繰り返しながら型の重要な部分を指導していきます。子供達も必死です。でも、教える指導員の先生方も必死でした。目の前の少年達の中には、遥か遠方から総本部の指導を受けに来ている少年達も多くいます。「総本部の稽古を受けたい!」 そう強く願っていた少年達です。彼等に応えるかのように全力で空手を教える総本部の指導員の先生方。指導員の先生方も指導に手を抜けるはずがありません。お互いに真剣なのです。遠方からきている少年達を思うと、府中支部の子供達は、総本部に近いところに住んでいるので恵まれているなと思いました。その後稽古は鉄騎初段へと移っていきます。相変わらず厳しい稽古でした。稽古が始まってから終わるまで殆ど騎馬立ちの状態で少年達は頑張ります。見ているだけで苦しいのは一目瞭然。足がガクガク震えている子も何人もいます。しかし、手を抜いている子がいません。皆、真剣に強くなることをひたすら願い稽古をしています。流石は各地から集まった一流の少年達です。もちろん精神面が強いだけではなく、型も驚くほど上手な少年ばかりでした。正直、私などが全然及ばない子が何人もいました。技のキレ、正確な姿勢、スピード。どれをとっても「素晴らしい!」の一言です。でも、府中支部の子供達も負けていません。他の支部の子供達は確かに上手でした。しかし「気合」は負けてないと思います。私の所まで聞こえてくるほど大きな声でした。府中支部の橋本正嘉君、正田悠人君、斉藤鳳生君。皆さん、本当に良い気合でした。

 今回、初めての引率ということで府中支部の少年達と共に過ごしたわけですが、少年達を見て「変わったな」と思うことがひとつあります。初日の総本部へ向かう道中、少年達の間で何度か些細ないさかいがありました。総本部への道に迷った事などでイライラさせてしまったのかも知れません。しかし、二日目の稽古を終えて帰宅する時でした。少年達は初めの頃とはうってかわって仲良くなっていました。これには正直驚きました。「空手は互いに同じ空間で、同じひとつのことを目指し、汗を流し合うことによって友情も生み出すのだ。」、と確信しました。なにより顔が違います。晴れ晴れとしていて、落ち着きすら漂うようになりました。

 今、思い返すのは中原会長のお話し、そして、杉浦首席師範の「基本を怠るな」と語りかけるような稽古。総本部指導員の先生方の熱心な指導。各地から集った素晴らしい空手少年達。それに負けじと、声を張り上げる我が府中支部の少年達。私はこの度、ひょんなことから引率で総本部へ行くことになった
のですが、本当に多くのたくさんのことを学ばせていただきました。中原会長、杉浦首席師範、総本部指導員の先生方からはもちろんのこと、参加した多くの空手少年達、そして府中支部の子供達にも多くの物事を学ばせてもらったという気持ちです。少年達をなだめ、稽古に疲れた少年達をねぎらい、一緒に笑いあった二日間でした。

 昨年(20005年)の11月、私は黒帯をようやく締める事が出来るようになりました。これを与えてくださった先生方を落胆させないように、日々稽古を積んで生きたいと思います。                         押忍!
       

 報告者:日本空手協会府中支部清水道場 佐田錦之介
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